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第2回 コストダウンに取り組む購買担当者にとっての「見えないコスト」

▼第2回 コストダウンに取り組む購買担当者にとっての「見えないコスト」/
山崎 悠

「測れないものは管理できない」

これはソフトウェアの業界でよく使われる言葉ですが、
間接資材の購買についても同じことが言えます。
何が、いつ、どこで、だれが購入したかなどの実態を
把握できていない購買行動を管理・最適化しようとしても、
何から改善すればいいのか、
そもそもそれが問題なのかどうかを判断することができません。

例えば主資材について言えば、自動車部品について
トヨタ系のサプライチェーンでは、ある部品について
あるサプライヤーが生産不可能になったとしても、
別のサプライヤーから手配できる、あるいは
トヨタ内部で生産できるよう、全ての製造方法等が
明らかにされています。

あらゆるブラックボックスを無くし、最適なサプライチェーン構築
を行っているのです。これはトヨタの「手の内化」
という技術方針によるものですが、

どのような機械で加工しているのか、
サイクルタイムはどの程度か、
各種処理はどのようなものか、
そしてコストはいくらか、

こういった構造はすべて明らかとなっています。
他業界の大手メーカーについても、
自動車業界のように突き詰めて行うことまではないまでも、
大なり小なり同様の管理を行っていることでしょう。
集中購買やEDIを用いることで間接資材についても
ボリュームの大きい品目は最適化を図っている企業も
数多くあります。
ただし前回のメルマガでお伝えしたように、
工場に関わるアイテムは無数と言ってもいいアイテム数が存在します

現実的にEDI等で管理・最適調達できる間接資材の品目は、
1万品目以下といった量ではないでしょうか
(これは付近の商社・代理店等にほぼ常に在庫が存在している
間接資材と言ってもいいでしょう)。

そしていくつかのメーカーの購買担当者のお話を聞いていると、
多くの工場において購入している間接資材のうち、
金額ベースでおそらく80%程度は実際に購買管理が
行われていると思います。

これは「見えている購買」の領域です。

購買改革、購買管理と題した書籍やセミナーは数多いですが、
その多くは金額の大きな、見えるコストをいかにコントロールするか、
という点に重きを置いています。

集中購買しかりABC分析しかり、いずれもこの80%の
領域を効果的に管理することにより直接的にコストを
下げることを目的にしています。

さて、問題としたいのは残りの20%の領域です。

金額的には高々全体の20%以下なので、全体ボリュームは少なく、
単価は安く、また品目数は数万~数十万に及ぶことでしょう。

購買改善のために時間を掛けても掛けても品目数が減らず、
またコストダウン効果もわずかな領域です。

例えば工機部門の駐車場の植木が伸びてきたので、
ちょうど寿命になってきていた剪定ばさみとほうきとチリ取りを、
工機部門の若手がホームセンターで買った、といったケース。

このようなケースを把握し、管理できるか、
と言えば多くの会社で困難でしょう。

金額で言えば総額で1万円にも満たず、
数年に1回しか発生しないであろう案件です。

「大した金額・案件ではないので、それはそれでいい」
という回答ももちろんあり得ます。
特に購買担当者にとっては、上記のような購買品はそもそもの
管理対象ではないケースも少なくありません。

そして現状の購買状況が把握困難ということは、
いくら改善活動を行っても効果が見えにくく、
成果としても報告しにくいのが現実です。

しかしこの領域の購買活動においては、
購買品の金額よりもむしろ機会費用の方が
重要な課題となります。

外注に出している加工品を毎回わざわざサプライヤーの
ところまで取りに行っていれば、上司からは
「何を時間を無駄にしている。持ち込みか、郵送してもらえ」
と怒られるでしょう。

でも上記の剪定ばさみのケースではあまり怒られることは
なさそうです。せいぜい「いつもの工具屋に頼めばよかったのに」
と言ったところでしょう。
でも時間の使い方としてはほぼ同じことです。
本来は、その時間に本当に自分がやらないといけない業務が
できたはずですから。EDI、購買管理システムは
このような間接資材購買に掛かる担当者の業務時間を削減する、
という説明がされます。

発注者はカタログやWEB上でほしい商品を選ぶことで、
あとは相見積もり等の作業をシステムが代行し、
お任せで最適な価格・納期でものを得ることができる
というものです。

購買調達の流れを簡単にすると、
A(調達案件発生)→B((相)見積もり)→C(発注)→D(配送)
というプロセスを経ることになります。
EDI等はこの流れのうち、Bを代行し、Dを各業者が行います。

この時のポイントは、発注側の相見積もり等の工数は省かれるため、
時間の削減が可能ということです。
これは間違いなく大きなメリットで、担当者は明らかに時間を節約し、
他の業務を行うことが可能です。
そして購買活動のデータも残るため、管理も容易になります。

一方で、品物を用意・配送する側にとってはどうでしょうか。
普段流れる商品、在庫品であれば特に問題はありません。
システムからの要望に沿って(多くの場合自動で)金額を出し、
決まれば商品を配送・郵送するだけです。

しかし在庫を持っていない、普段流れない「その他20%」の
領域の商品発注が来た場合はどうでしょうか。

商品を探し、メーカー、代理店に見積を取り、
その工数分を価格に反映した見積を提出するはずです。

つまりシステムで効率的に処理されているように見えながら、
「その他20%」領域の非主流・非在庫商品、
ロングテール商品は、末端では従来となんら変わりない
プロセスで価格、納期が決定されているのです。

情報を把握し、管理が可能になるという点では大きな成果ですが、
根本からロングテール間接資材の購買改革を行うためには
さらに一歩踏み込んだ改善が必要となります。

次回に続く

第1回 コストダウンに取り組む購買担当者にとっての「見えないコスト」

▼第1回 コストダウンに取り組む購買担当者にとっての「見えないコスト」/
山崎 悠

調達・購買のご担当者からすれば当たり前のことではありますが、
製造業が外部から購入するものを、大きく2つに分けると
「直接資材」と「間接資材」に分けられます。

直接資材とは、工場が生産している製品に組み込まれるもの、
各種加工部品や金属材料、樹脂材料、ねじ、電装部品等が該当します。
自動車であればエンジンブロックや各種モーター、ワイヤーハーネス、
ランプ、バッテリー、シャフト等々。
それに対して、間接資材とは直接製品に使われることのない
資材のことを指します。
たとえばエンジンブロックを生産するためのダイカスト金型、
ダイカスト後の機械加工に使用する切削工具、
切削箇所に掛ける切削油、搬送コンベアの潤滑油、
潤滑油等を現場で拭うウエス、作業者の手袋やヘルメット、
各種クリーナー等が該当します。

一般に調達改革、サプライヤー管理といったことが行われる際は、
直接資材または直接資材の生産に深く関わる金型等の生産設備が
対象となることがほとんどです。
それは最終製品の品質、価格、そして会社の利益に深く関わるため
見過ごすことのできないポイントだからです。

生産現場の管理手法として、3M(あるいは4M)に視点を置く手法が
ありますが、この管理対象であるMan(人)、Machine(機械)、
Material(材料)の内、Materialの多くは、
製品の構成要素となる直接資材に当然ながら偏っています。

もちろん間接資材を含む場合も多量に使用するものについては
コスト管理・改善の対象となり得ます。
年鑑購買量・額が多い切削工具や各種潤滑油、ガスや薬液のようなものであれば、
細かく管理、コスト改善することは理に叶っています。
しかし、工場で使用する間接資材の量は、数千~数万に及ぶことが
珍しくありません。年間数個~数百個程度しか出ないような、
しかも1個数100円~数1000円といった低価格の商品にまで、
1品1品、購買のたびに相見積もりを取るといったことは現実的に不可能です。

たとえば今購入している間接資材Aが、単価500円、年間購入個数 延べ100個
といった商品に対して、仮に現状購入先から別の会社に切り替えれば単価350円
になる、としても別の会社を探す時間や見積もりを依頼する工数が掛かります。
極端な話、この切り替えを行うために、調達担当者が1日の時間を延べで
掛けたとすれば、商品のコストダウン効果よりも調達担当者の時間コストが上回り、
調達部門としては総合的に赤字となるはずです。

つまり年間購入額の少ない、しかし膨大な数の間接資材については、
「そこそこメインの資材で価格協力してくれる出入りの商社等に、
こまごまとしたものもまとめて頼もう」となります。

そのため毎日現場に訪問している工具商社から購入しているものは、
「数が出て高価な工具は比較的安いが、クリーナーやグリスなどは相当に高い」
といった状況が起こります。

これは調達に掛かった費用(時間・金額・人員等)に対し、
費用対効果が最大化された「ベストな状態」ではないものの、
各担当者の時間コストや機会費用を考えれば割と「ベターな状態」なのです。
出入りの工具商社の価値も、工場の現場・調達担当者の工数・時間を削減し、
最適ではないものの「割と効率的な、ベターな購買の状態」を
提供してきたことにあります。
EDI等が普及しながらも工具商社等の「訪問 物売り」業態が
まだまだ活発なのには、個別工場の調達担当者やシステムだけでは
解決できない領域の、見えないコストが隠れていることに理由があります。

ではこういった「割とベターな状態」からさらに進み、
間接資材の中でもロングテールな部分の資材、つまり購入頻度、購入額は
少ないけれど、すべてまとめると膨大な購入額になるような部分の
資材調達 最適化の手法はあるのか、ということが次回の命題です。

次回に続く

生産技術としての金属3Dプリンタ

▼生産技術としての金属3Dプリンタ/山崎 悠

1昨年のJIMTOFで大きく注目されていた金属3Dプリンタをはじめとした、
従来の除去加工とは異なる付加的加工、Additive Manufacturingですが、
ブームは少し落ち着いた感があります。この分野で先行した有名な
某工作機械メーカーの機会も2015年は2014年と比較して、かなり少ない台数
しか売れていないという情報もあります。こういったAdditive Manufacturing
の状況に対して「単に一過性の盛り上がりに過ぎないものが終わっただけ」
という意見もありますが、現実的にはJIMTOFで喧伝された華々しい製品群は
「まだ不要」と多くの企業が判断したということだと思います。

では、実際にこれらの新技術が採用されていないのかというとそうではない
ようです。試作目的ではなく、部品の生産手段として金属3Dプリンタが検討、
活用される時代になっています。ある精密機器部品のサプライヤーの社長は、
「ここ2~3年で、3Dプリンタによる量産部品の生産を同時検討している
という金属部品の図面が明らかに増えた」と言います。その一方で、「既存加工
技術が金属3Dプリンタに置き換わるケースは、5%も無い」とも言います。

金属3Dプリンタの利点を改めて簡単に整理すると、
① 多品種微量生産が可能となること
② 既存加工技術では不可能な複雑形状・3次元構造が実現できること
③ 通常は多工程に渡る生産工程が1台で完結すること
④(既存加工技術で金型が必要な場合は)金型が不要なこと
⑤ 材料歩留りが良い
といった項目が挙げられます。

これらの利点が、生産における課題をクリアすれば普及が進むものと
思われますが、現実には「ロット」「材質」面での課題が大きな制約条件と
なっているようです。「材質」面での課題ですが、これは材種のラインナップ
と材料費の課題に分けられます。使いたい鋼種で部品製作ができない、材種の
ラインナップが少ないという分かり易い課題と、プリンティング用の材料が
高価すぎて、部品単価が常識外の金額になってしまう課題です。

まず材種ラインナップの課題は近いうちに解決されるでしょう。英米を中心に、
純銅や純タングステン等、難加工素材について3Dプリンティングが
次々と成功しています。

一方で、材料費の課題が根本的に解決される日は遠そうです。
Additive Manufacturingの性質上、積層、焼結が可能なように金属材料は
均一な粉末状態で機械に供給される必要があります。
粉末状態の金属材料は、一般にソリッドで購入される金属材料の数10倍の
価格となるため効果にならざるを得ません。必然的に金属3Dプリント部品の
用途は、材料が効果であっても形状や機能性が重要となる、
試作部品やヒートシンク、振動子等、高付加価値部品に限られ続けることに
なりそうです。

もうひとつの課題はロットです。金属3Dプリンタは1台数千万円から1億円と
いった効果な金額が必要です。加えて実際に導入している企業の話すところに
よると、導入時以上に負担が大きいのは、稼働させる限り常に掛かり続ける高額の
メンテナンスコストであると言います。実際にものを作るために必要なのは
1~10個で数時間~数十時間。単純形状部品の切削加工であれば1個数10秒から
数分で作れてしまうのに、です。ある金属射出成形(MIM)のサプライヤー企業には、
「MIMと3Dプリンタ、どちらが安いか」という質問がたまに入るそうですが、
営業担当者は「ロットが違いすぎるのでナンセンス。3DプリンタとMIMは
比較される生産技術では無い」と言い切っています。

日本で金属3Dプリンタを持つ企業の現実的な生産ロットは、
1月多くて数100個程度。金属射出成形の場合は1ロット1000個以上。
生産数のオーダーが1ケタ以上違うため、生産技術として3Dプリンタを
考える場合の「量産」のオーダーは、今のところせいぜいロット100個程度と
思われます。されど、この「材料」「ロット」の面における課題を踏まえた上で、
「これまでにない設計」を必要とする部品は、医療機器業界や電機機器業界等を
はじめとして、実際に金属3Dプリンタの活用が進んでいます。

上記で見たように、金属3Dプリンタは金属切削加工やMIMなど、
既存加工技術の代替技術というよりは補完技術と言える位置を占めてきている
と言え、エンジニアは他の加工方法との区別、使い分けが今後ますます重要と
なるでしょう。

~次回に続く~