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RPAブーム

RPAがブームです。

昨年末~今年にかけて、RPAをタイトルに挙げたITベンダーのセミナー案内が頻繁に届くようになりました。

当初、個人的には「ブームが終わり掛けて、営業攻勢を強めているのだろうか」と思っていたのですが、どうも周りの状況を聞くに本当に導入しようという企業が増えているようです。

試しにセミナーポータルサイト等で、RPAテーマのセミナーを検索してみましたが無数に出てきて数えるのは諦めました。

RPAについてはいろいろな意見があり、賛否両論、というか礼讃の声が多いです。
さらに、船井総研でもRPAをテーマにした講演を行っていたりします。
(その中身自体は業種別コンサルティングの視点から業務プロセスに切り込むものなので、 世の中一般の「RPA導入」とは多少性格が違うことは注記させて頂きます)

ただ「RPAはいいぞ!」というコメントの多くが近視眼的であり、ITベンダーが言う売り込み内容をそのまま述べているだけで、自社のオペレーションに落とし込んでの想像ができていないことが問題です。

私の意見は、3年程度までのスパンでは役に立つが、それ以上先を見据えるなら他にやることがある、です。

「働き方改革の本命」は本当か

RPAは「働き方改革」において重要な位置を占めているとよく言われます。

「働き方改革しないといけないから、何かしよう」となにか手っ取り早く使えそうなツールとして、RPAが目に入ることは当然です。RPA自体は確かに人的労働の自動化となるため、論理的には生産性は上がります。

さて、では生産性とは何か、というと
「ヒト・モノ・カネをどれだけ使って、どれだけの付加価値を生み出したか」、と言い換えることができます。

生産性を上げるには、
①ヒト・モノ・カネの投入量を下げ、
②生み出される付加価値を上げる
ということにまとめられます。

RPAは①の部分のヒトの投入量を下げる、ということにつながるわけです。

このこと自体は文句のつけようがありません。

「製造以外の、間接部門の改善はこれまで進んでいなかった」

これもある程度正しい意見でしょう。

「そこで、人のPC作業を代替して、この課題を解決できるのがRPAです」

ここで論理の飛躍が起きます。

冒頭で他にやることがある、と書いたのはここの論理的飛躍が多くのRPA推進論に見られるからです。

例えば、20年前の生産設備と業務フローで動いているような製造現場があって、
「その工場の生産性を上げよ」、と言われたときに「ロボットを入れましょう!」と考える人がどれだけいるでしょうか?

「いやいや、ちょっと待て。設備とフローの見直しの方が先じゃないか」となるのが王道ではないでしょうか。

RPAは単純に言うと、PC上でロボットに作業を行わせることですから、実は上記の例えとほぼ同じ状況です。

そんなものが、本当に「改革」の旗手に相応しいかは疑問であります。

改革はトップダウンでなければ進まない

ではなぜRPAがここまでブームになっているかというと、売り手側の思惑を除けば、「分かりやすさ」だと思います。

ITシステム関係の仕様書を見たことがある人であれば、その理由は分かります。専門でシステムを担当している人でなければ、一見して拒否反応が出ることは想像に難くありません。

専門用語のオンパレード、出てくるフロー図は複雑、文章・図表も長々と続き、理解困難。「なにがどう変わるの?」と聞いても技術的に専門用語が続き、「こういうのはできる?」と聞いても返答は要領を得ない。

こういう状況では自分も説明動画などで瞬時に理解できるRPAを「これはすごい!」と思うのも当然です。

更に売り文句として、「各部署で導入して、ささいな業務のムダからボトムアップで改善できます」と言われると、さらに魅力的に感じてしまいます。

 

しかしながら、関節業務の業務フローの改善はボトムアップではすぐに限界が訪れることが多いです。

自分の業務がある程度楽になっていく間は取り組んでも、給料(残業代含む)が下がったり、自分の仕事自体が無くなる恐れが出てくるとそこで意識的・無意識的にストップが掛かるのは当然です。

あるいはそれほど穿った見方をしなくても、改善すべき業務が何かを見定めることが実務者の立場からは実際には困難なケースが多いです。

いくつもの会社の状況を拝見していて、この種の業務改善は経営者、あるいは責任ある部課長が取り組まなければ効果は上がりません。

そのためには理解が困難でも、それぞれの担当者が果たしている複雑な業務を理解し、再度ヒト、モノ、カネ、情報の流れを整理・整頓しなければいけません。

ITベンダーと複雑怪奇な用語を駆使しながらも粘り強く議論を進める必要もあります。

しかしこのことから避けてRPAに走っても根本的な成果は上がらないでしょう。
表層の作業改善だけでは表層的な成果しか出ません。

RPAは業務改革のラストランナー

RPAは確かに人的作業の代替として有効ですが、有効の有無ではなくアウトプットの大小で評価しなければいけません。

固定費として年間何十~何百万の維持費を払い、かつ費用支払いが無くなったら効果も消えるロボットの派遣社員を雇うのか、

難易度は高いが自社の業務プロセスをより高いレベルに上げる投資を行うのか、

私は常に後者を優先すべきだと思います。

特に「業務改革だ」→「RPAだ」と言ってくる社員はロクに自社の業務やシステムのことを知らない、興味もない人だと思います。

日々業務の生産性を考えていれば、「この作業がムダでは」「この処理はシステム内で一括処理できないのか」「この業務とあの業務でデータが連携できるといいのに」といった発想が出てしかるべきです。

そういった改善事項を出し尽くし、コスト対効果を検証し、可能なものはIT投資を実施した後に、RPAの費用対効果検証と導入実施を行うべきです。

このRPAの費用対効果の算出が厄介で、単純に人件費で置き換えた計算を行うケースが多いのですが、導入後実際に想定通りのコストダウンになったというケースを聞いたことがほとんどありません。

浮いた時間でより高い付加価値を、という宣伝文句もありますが、そうそう付加価値の高い仕事は転がっていないのが現実です。

儲かっている会社は、だから製造現場から投資を行って、バックオフィスは後回しになるのです。後回しでも、全社の生産性がより上がればいいのですから。

RPAは業務改革における、どうしようもない人的作業を置き換えるツールです。低投資から始められる点は良い点ですが、生産性の継続的向上にはつながらず、固定費を払うのを止めればなくなるロボット派遣社員と捉えていいでしょう。

したがってRPAだけ行うのは危険で、長期的な視点での業務改善・投資と同時かその後に行うべきです。自社がRPAでコストダウンを図る間に、競合はIT投資でコストダウンと付加価値アップを同時に進めている可能性があるのですから。


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