船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の最新技術
~部品加工業とIT~

山崎 悠
更新日:2017.06.28

学問分野に未来学という分野があります。この未来学によれば、未来のシナリオを考えるためにはいくつかのパターンがあり、もっともポピュラーなのが「過去・現在・想像(SF)」を元に考えるというパターンです。すなわち、「過去にあった同類のこと」「現在世界の極所で見られる限界的事例」「SF、つまり人間の想像力で描かれる事例」の3つです。「AI」というキーワードはまさに今が旬のキーワードです。ではこの「AI」が部品加工業とどう関わるのか、という点については「過去」の視点から考えるのがどうも良さそうに思います。「過去」とは新しいテクノロジーが登場したときに社会がどう変わるか、というパターンです。蒸気機関の登場により、人力から機械へと動力は置き換わり、生産性は数倍・数十倍へと激増しました。では現代においてPCをはじめ、AIまで含んだ広範な情報技術(IT)は職場の生産性をどれほど上げているのか?2016年にアメリカにて、国内を対象に調査研究が行われました。この調査の結果、アメリカの生産性の伸びは1970年代と変化が無いことが明らかになっています。つまり、情報技術の進歩は従来の成長の延長線上で捉えられる程度しか生産性を伸ばしておらず、機械や電気、産業用ロボットの利用といった過去の事例と比べるに値しない、という結論です。加工業において個別に見れば、CNCマシンの登場や複合加工機等の登場はありましたが、未だ人に頼る部分も多く、加工業全体では生産性が数倍、数十倍ということも未だなさそうです。ここで「過去」の興味深い事例があります。産業革命、電気、そして自動車の普及の時期です。蒸気機関と電気、そして自動車が生産性を劇的に変えたことは疑いありません。見るべき点は「生産性増加が顕れるまでどのくらいの時間が掛かったのか」です。生産性の統計データを見ると、この3つの事例すべてにおいて、登場から20年から30年の間潜伏期間がありました。つまり新しいテクノロジーが登場して、一部では持て囃されるけれども、産業界全体に普及し、成果を発揮するまでは20~30年の時間が掛かるということです(情報技術の例として、マイクロソフトの設立は1975年、爆発的な普及の切欠となったWindows95までは20年の期間となっています)。多品種少量生産の加工現場におけるIT活用の例として、5月末に経済産業省から発表されたスマート工場の支援事業で駿河精機が「AIの活用」というテーマで成果発表を行っています。これはAIを利用して各作業者の加工プログラム作成プロセスを学習させ、加工プログラムの標準化を図り、どの工場、設備でも、誰でも同じ加工ができるようにする、という内容です。一般の加工会社にとってはまだ10年以上掛かるかもしれませんが、膨大な加工データとそれを扱うAIが生産性向上の鍵を握っていると言えると思います。



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