船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の最新技術 (米国工作機械雑誌 Modern Machine Shopより)
~量産不可能な加工に対するアプローチ。新素材を採用した世界初の加工機〜

山崎 悠
更新日:2017.03.29

2月に中東で開催された防衛関連の展示会にて、ロッキードマーティン社のジョイントベンチャー企業(スウェーデン)が開発した新しい5軸加工機がお披露目されました。形状はおよそ従来の5軸加工機とは異質で、多軸関節を持った産業用ロボットに見えます。そのロボットのアーム先端に刃物が取り付けられ、切削加工を行います。この加工機にはカバーも無ければ主軸を支えるコラムもありません。主要部分がほぼすべてカーボンファイバーで作られた直径30センチ、先端10センチほどの細い多軸アームが縦横無尽に動き、上下左右あらゆる角度、方向から加工を行うことが可能なのです。ロボットを用いたデバリングマシンなどに見た目は似ているかもしれません。しかしバリ取り等の加工負荷に耐えるために大きく、太く、重くならざるを得なかったアームは、軽く、高強度のカーボンにより細くなり、スピードと省スペースを実現しています。この加工機が開発された意図は、工作機械の構造上、加工不可能あるいは極めて困難な形状を、高速・高効率の条件を満たしながら加工可能とするためです。従来型の5軸加工機はXYZ軸と多数の回転軸の制御により、ワークの外面については、主軸に固定された工具が届く限り、ほぼどんな形でも加工が可能です。しかし例えば複雑なエンジンブロックの内部や、流体力学を駆使したパイプ形状等、そもそも工具が物理的に絶対に届かない内面形状は加工不可能です。そのため部品を分割したり、複雑極まりない治具を作ったり、ダイカストで製作したり、果ては3Dプリンターで製作を行う、といった生産の工夫が必要でした。しかし人間の手の先に切削工具を付けるように、自在に下から、上から、奥から、手前から自由に加工ができる機械があれば、量産生産はどう変わるだろうか、という回答がこの新しいカーボンロボット加工機です。当然 防衛産業、特に航空機関係の加工要請から開発されたこの加工機ですが、宇宙産業や自動車産業に今後採用が進む予定のようです。位置決め精度は10μmと決して高精度ではありません。しかし新しい素材、アプローチで標準品が登場したことはとても重要で、今後注目しておきたい加工技術に関わる情報です。



最新のコンテンツ