船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の市況  ~変化が激しい時代に大切なこと ~

片山 和也
更新日:2017.02.25

今、製鉄会社は新日鉄住金もJFEもフル稼働の状態が続いています。1月17日の日本経済新聞の記事にもでていましたが、2016年11月の鋼材受注量は昨年対比5.7%増で3年ぶりの高い伸び率だそうです。うち製造業向けは7.2%増でさらに高水準。特に自動車向けは14.9%増とさらに高水準です。また建設機械も今年に入ってから好調で、さらには家電も好調とのこと。こうしたことから薄板の需要がひっ迫しており、材料が足りない工場への対策として鉄を空輸する自動車メーカーもあると聞きました。その結果、いたるところで材料の値上げが聞かれます。継手などの管材関係がこの1月に10%値上げ、さらに4月にはまた10%値上げするそうです。先週の新聞ではトヨタ自動車が材料支給価格を値上げする、と出ていましたが、こうした一連の流れです。材料が値上がるというマイナス要因もありますが、根本的には需要が増加しているわけで我々の業界にとっては大きなプラス材料だと思います。そして、この現在の“鉄不足”の原因は中国の急激な減産にあります。中国の中央指導部は地方の高炉の稼働を止める前提で減産を指示したと言います。ほんの半年前までは製鉄会社トップが「中国の鉄鋼の過剰生産の解消には数世代かかる」と言っていました。今という時代は、従来は数年スパンで起きていたことが数ヶ月スパンで起きてしまう、そうした変化が激しい時代だということです。

こうした変化が激しい時代に大切なことは「自らシナリオをつくる」ということです。この「シナリオをつくる」ということに徹底的にこだわっている国が、製造業においても高い生産性を誇るドイツとオランダです。例えばドイツはKUKAというロボットメーカーを中国の家電企業に売却しました。その理由は、 ①ロボットはコモディティ化する  ②ドイツ国内ではコモディティ化した製品はペイしない

という判断によるものです。実際、中国での産業用ロボットの需要はものすごいものがあります。

しかしロボットを生産するには次の“3点セット”が必要です。

それは、 1)精密減速機  2)ACサーボコントローラー  3)ACサーボモーター

上記1)~3)は先進国の一握りの会社しかつくれないコアパーツです。特に 精密減速機 は事実上世界でも3社くらいしかつくれない超コアパーツです。そしてドイツは上記全てのメーカーを国内に持っています。従って、中国企業がKUKAのロボットをコピーして量産すればするほど、ドイツのコアパーツがどんどん売れる、ということになります。こうしたしたたかさがドイツという国家にはあるのです。さらにしたたかなのは、オランダの家電メーカーフィリップスの戦略です。同社は世界一の白熱電球メーカーであったにも関わらず、2006年に自ら白熱電球の廃止を提言しました。この時点で白熱電球の売上がフィリップスの中で、約30%あったにも関わらずです。同社はただ廃止を提言しただけでなく、白熱電球が地球温暖化に悪影響を及ぼすことを環境NGOや市民社会団体に示し、各国政府が製造メーカーに白熱電球の生産中止を“要求”する様、先頭にたって働きかけたのです。そしてフィリップス自身は、白熱電球の代わりにLEDライトや省エネ蛍光灯など“環境にやさしい照明”に随時切り替え、2012年には照明部門の売上の7割が省エネ照明となりました。仮に同社が白熱電球に固執していたら、LEDライトや省エネ蛍光灯といった破壊的技術にじりじりと追い上げられ、大きな損失を出しながら撤退に追い込まれていたことでしょう。

この様に、彼らは“スクラップ & ビルド”を行っている様に見えます。日本も同様で、伊勢神宮の式年遷宮の様に、永遠の繁栄を維持するためには“スクラップ & ビルド”が欠かせないのです。もっと正確に言うと、ドイツやオランダなど長い歴史を持つ欧州先進国は“シナリオ + スクラップ & ビルド”を行っているといえます。すなわち自ら「シナリオ」をつくり、それに基づいて スクラップ & ビルド を行っているのです。「未来予測」はすることができませんが、「シナリオ」はつくることができます。半年先が予測できない現在の時代、最も大切なことは「シナリオ」づくりではないでしょうか。



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