船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の市況
~ 今、部品加工業が取り組むべき「働き方改革」~

片山 和也
更新日:2017.03.29

金曜日は15時に仕事を終えることを推奨するプレミアム・フライデーが始まりました。電通の一件にはじまり、クロネコヤマトでも残業の未払い分を7万6000人の従業員に支払うそうですが、この「働き方改革」の流れは止めることができないと私は思っています。「働き方改革」の本質は、“労働時間を減少させて利益も減少させる”ということではありません。“労働時間を減少させて利益を増加させる”ことだと私は強く考えています。例えば船井総合研究所 社長の中谷は、現在は「下山経営の時代」と毎年8月の経営戦略セミナーでもお伝えさせていただいています。「下山経営」とは、現在の様に市場規模そのものの成長が見込まれないなか、いかに自社を成長させていくか、という考え方です。かつての高度経済成長あるいはバブル経済の時代であれば、営業所をドンドン出して売上の拡大を図る経営手法がよかったでしょう。

しかし現在は違います。売上ではなく、いかに利益を増やすのか、利益率・収益性を高めていくのか、ということが大事な時代なのです。特に国内で勝負しなければならない中小企業にとって利益率・収益性の向上が最重要の経営テーマであるといえます。例えば、先日お伺いした某プレス加工会社では、約30名の作業者に対して100台近くのプレス加工機を保有しています。うち60台は金型がつけっぱなしになっており、短納期・特急対応が可能になっています。そして常時稼働しているプレス加工機はだいたい30台です。それでもこの某プレス加工会社は月商3億円近い売り上げをあげており、極めて高い収益性を誇ります。普通の工場は「稼働率」を求めるのでこうした発想になりません。この某プレス加工会社の社長は言われていました。「50年前の大卒初任給が3万円。今の大卒の初任給が21万円。50年間で人件費は7倍も増えていることがわかります。ところが、やはり50年前の60トンプレスの価格はだいたい300万円、現在は700万円くらい。設備の価格はせいぜい2倍くらいにしかなっていない」というのです。

この様に、どんな業界でも常識の逆張りを行って通常の3~10倍もの収益を上げておられる会社が必ずあります。例えば兵庫県姫路市の株式会社宝角合金製作所も、独自の哲学で生産性を高めているモデル部品加工業です。同社の場合は、この15年間で売上高が2倍、経常利益率は数%そこそこだったのが、ここ近年ではずっと10%を超える優良企業です。また1人あたり販売管理費は、15年前の半分近い水準まで下がっています。同社が徹底的に取り組んだのは新規開拓です。部品加工業の従来の経営の鉄則は、決まった特定顧客の仕事に専念する、ということでした。当然のことながら、不特定多数の仕事をいろいろとこなすよりも、決まった特定顧客の慣れた仕事をずっとしていた方が、一般論でいうと生産性は上がります。しかしこの一般論も、その特定の親会社から余りある十分な仕事が獲得できていれば、という前提条件がつきます。2000年のITバブル崩壊で、多くの大企業ピラミッドも崩れました。つまり特定の親会社からの仕事だけでは安定経営ができなくなった、ということです。そしてこの流れは、リーマン・ショック、さらには3.11による大手企業の生産海外移転がそれを決定的なものにしました。宝角合金製作所も、特定の親会社だけの仕事していた時は、特殊物・一品物など、言われた仕事は何でも受けるしかない状況でした。その結果、ベテランの職人や汎用機が中心の仕事ばかりで、生産性が上がらず売り上げも一定水準以上上がらない状態でした。

そこで同社はマーケティングを取り入れ、新規開拓に積極的に取り組み、繰り返し品や数が見込める品物を選別して受注する様にしました。また作業も標準化を進め、設備も汎用機からNCへと切り替えを進め、近年では複合機を導入するなど、文字通り「働き方改革」を進めました。その成果が近年の高収益につながっています。

そして来月、4月14日に予定されている“先端「町工場」視察セミナー2017年春in関西”では、この株式会社宝角合金製作所様も訪問予定となっております。ぜひ普段は絶対に見ることのできないモデル企業の現場を見ていただき、そしてモデル企業の経営者のお話はもちろん、全国から集まった志の高い同業者と交流していただき、ぜひ自社のイノベーションにつなげていただきたいと思います。



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