船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の市況~2016年7月の市況~

片山 和也
更新日:2016.08.02

 イギリスEU離脱の影響が、徐々に出てきています。先日は、アイシンAWが予定していた設備投資を中止した、という情報が入りました。また中小企業においても、予定していた設備導入をキャンセルした、という声も聞かれる様になりました。国際政治学者でリスク調査会社「ユーラシア・グループ」の社長、イアン・ブレマー氏は、今回のイギリスEU離脱を、① 2001年の世界同時多発テロ ② 2008年のリーマンショック よりも巨大で深刻なものだと、警鐘を乱打しています。早ければ今年の秋口、遅くとも来年の秋口までには相当深刻な景気後退が本格的なものになることは、想定しておかなければなりません。2008年のリーマンショックと今回の大きな違いは、前者がいわゆる「経済危機」なのに対して、今回は「ソブリン・リスク」である、という点です。それに対して多くのエコノミストは楽観的だと私は思います。余談ですが、メガバンク系のシンクタンクの2007年時点でのサブプライム問題への見解が、現在でもPDFの経済レポートという形でネット上に残っています。それを読むと、日本経済に大きな影響が及ぶ確率は2割程度であり、日本経済に影響を与えない確率が8割だと言っています。そもそも、シンクタンク系エコノミストの根本的な仕事は株式市場を活性化させることにあります。そうした立場のエコノミストが、マーケットを盛り下げる様な見解はそもそも出せないわけです。まさに現在という時代は、「自分の身は自分で守る」時代であることを再認識する必要があります。こうした激動の現在に対処する考え方として、以前にもお伝えしたVUCA(ブーカ)について再度述べたいと思います。VUCA(ブーカ)は今年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で頻繁に取り上げられ、今注目を集めているキーワードです。VUCAとはもともとアメリカの軍事用語だったそうですが、次の4つの単語の頭文字を取ったものです。・Volatility(変動性)  ・Uncertainty(不確実性)  ・Complexity(複雑性)  ・Ambiguity(曖昧性)
冷戦の終結により複雑化した各国の情勢や戦略・戦術を記述するためのキーワードだったそうですが、現在ではそれがビジネスの世界に使われているのです。そしてヨーロッパ最大のコンサルティング会社であるローランド・ベルガー社は、次の5つをVUCAに勝つための要件として挙げています。① 確固たるビジョン・シナリオ ② 走りながら考える(トライ&エラー) ③ 事業の「複線化」 ④ ゲームの“ルールメーカー” ⑤ イノベーションの追求  特に大事なのが①だと思いますが、“確固たるビジョン”とは言い換えれば自社の「強み」の把握です。さらに“シナリオ”とは不況対策に他なりません。また部品加工業など受託型製造業の場合は特に、前述のVUCAに勝つための要件の中で、 ③事業の「複線化」が必須となります。すなわち「特定顧客依存・特定業界依存からの脱却」ということです。そのための大きな考え方として、まず自社が取るべき戦略を次の2つのうちどちらかに絞るべきです。戦略1:地域密着戦略  戦略2:広域エリア戦略多くの受託型製造業が、上記2つの戦略が混在している結果、収益性や成長性の足を引っ張っているといえます。さらに加工業が収益性・成長性アップのためにとる成長戦略の2つの流れとして、戦略a:設計者へのスペック売り戦略 戦略b:サプライチェーン統合戦略 のいずれかがあります。自社の企業風土に合わない改革はうまくいきません。自社の企業風土・文化を見据えた上で、実行可能な改革を行っていくべきです。さらに多くの人があまり気づいていませんが、市場が右肩下がりになると、「規模の経済」が効きにくくなり、「ゲリラ戦」が有効になってきます。実際、昨年の中小企業白書でも報告されていますが、今や従業員20人以下の零細企業の上位25%の収益性が、大企業の上位25%の収益性を上回っている時代なのです。言い換えれば社長の意欲と適切な決断で小が大に勝てる時代であることを強く認識するべきなのです。私が来る8月30日(火)に開催させていただく 機械加工業「社長の仕事」セミナー(東京にて開催)でお伝えさせていただきたいことも、そういうことです。



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