船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の市況
~次世代自動車産業というビジネスチャンス~

片山 和也
更新日:2017.06.28

先日、某完成車メーカーのR&D部門の統括役員と面談をする機会がありました。その中でわかったことは、現在の完成車メーカーは「次世代自動車」に対して強烈な危機感を抱きつつも、具体的な対策や答えは持ち合わせていない、という事実です。

「次世代自動車」には様々な定義がありますが、一般論として次世代自動車とは、HV(ハイブリッド)車、PHV(プラグインハイブリッド)車、EV(電気自動)車、FCV(燃料電池)車、クリーンディーゼル車を指します。ここで我々がしっかりと押さえておかなければならないことは、AIやIoTによる夢物語以前の問題として、次世代自動車によって製造業の産業構造が大きく変わる、ということです。具体的には「従来型自動車産業では完成車メーカーが主導権を握る」 が、「次世代自動車産業では部品メーカーあるいは設備メーカーが主導権を握る」という事実です。つまり今までとの完全な逆転現象であり、これは70年に1度の産業構造の変化です。そしてこうした現象は既におこりつつあります。次世代自動車産業ではパワートレイン(バッテリー、インバータ、モーター、無段変速機、コモンレール)やパワーエレクトロニクス(パワー半導体、車載用電子回路、コンバーター、充電システム)、運転支援システム(AI対応電子制御ユニット、ミリ波レーダー、カメラ、画像センサ、自動ブレーキ)、コックピットモジュール(車載用液晶、ヘッドアップディスプレイ)などが必要とされる技術分野となります。

これら次世代自動車に必要とされる技術分野のうち、現在の完成車サプライチェーン(=系列企業)の中で賄える技術分野はほんの一部です。大半の分野は、現在の完成車サプライチェーン外(=系列企業外)の企業に依存することになります。例えばEVやHV、PHV車に使用されるリチウムイオン電池は、セパレーターといわれるフィルム状のシートを、何重にも巻くことによって製造されます。こうした、リチウムイオン電池用セパレーターフィルム巻き機を製造しているメーカーは極めて多忙で、2年以上の受注残を抱えています。また最近、私の関係先の部品加工業は某大手重工系関連メーカーから月次1,000万円近い新規リピート受注をしました。この某大手重工系関連メーカーは液晶の検査装置を製造していますが、2010年に液晶バブルが弾けた際には、同事業部の人員は1/5に減らされ、液晶の検査装置事業は風前の灯火でした。ところが現在、特に次世代自動車のコックピットモジュールのインターフェースの大半が液晶タッチパネルです。自動車のタッチパネルは万が一のトラブルを防ぐため、全数検査を行い品質に万全を期していますが、こうした品質が求められる分野では価格が高くても日本製が好まれるのです。現在は同事業部の人員は、液晶バブルのピーク人員の2倍近くにもなり、完全復活を遂げています。そうした中で新規サプライヤーを探されており、私の関係先の部品加工業が新規受注するに至ったのです。また部品においても、次世代自動車の分野では内燃機関の時代以上に「軽量化」が求められます。従来に増して部品の“中空化”が必要となり、かつコストの安い塑性加工技術が求められるため、深絞りや中空鍛造などが得意なサプライヤーにはこうした新規開発案件が集まっています。先日も私の関係先のプレス加工業が、ホームページをリニューアルしました。自社の得意技術である深絞りを前面に出していましたが、そのホームページをみた某素材メーカーからコンタクトがあり、NDA(機密保持契約)を締結した上で、工法開発をスタートさせることになりました。こうした話はほんの一例です。ひとつハッキリ言えることは、既存の完成車メーカーのTir2、Tir3は既存の仕事で手一杯で、こうした次世代のトレンドに必要な技術を持ち合わせていない、開発もできていないケースが多々あるということです。その結果Tir1メーカーは、次世代のトレンドに対応できる技術を有する会社、あるいは開発する意思を有する会社、すなわち新規サプライヤーを探しまくることになります。そう考えると、現在は内燃機関から次世代自動車の時代に切り替わる、70年に一度の大チャンスであることがわかります。このチャンスをモノにするためには、従来の「営業」だけでなく新たに「マーケティング」を行っていく必要があります。そうしたお話を、巻末の案内にある「金属加工業 脱自動車セミナー」で詳しくお伝えしたいと思います。本セミナーは東京・名古屋で開催いたしましたが、好評のため会場を浜松・広島でも追加開催することとなりました。ぜひご参加をご検討いただければと思います。



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