船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の市況~未来からの警告!より:部品加工業の社長が今すぐ手を打っておくべきこと~

片山 和也
更新日:2016.09.01

 過去に例が無いほど先行きが不透明な現在において、部品加工業経営者の皆様に知っておいていただきたいのが、次に述べる「4つの不確実」の話です。米メリーランド大学のヒュー・コートニー教授がハーバード・ビジネスレビューに発表した論文によると、ビジネスの世界において不確実性には次の4つのレベルがあるそうです。レベル1はそもそも不確実性が非常に低く、ほぼ将来が予見できる状態です。この不確実下では従来の単純な計画法で十分だといいます。レベル2は将来の完全な予見はできないが、「概ねこうなるだろう」という選択肢が複数に絞られる場合です。意思決定者はそのいずれかを選ぶ、という思考パターンが重要になります。レベル3は選択肢が絞り込めるほどには将来を見通せないが、ある程度の確率と触れ幅で事業環境の変化が予見できる状態です。この環境では「シナリオ・プランニング」が思考を助ける有用なツールになります。レベル4は不確実性が事業環境の多様な範囲にわたるため、将来を予見するための拠り所すらない状況です。この環境では「積極的に市場をかたちづくる」姿勢が求められます。 そしてそれができれば、むしろ低いリスクで高いリターンが得られる機会となり得るというのです。同論文ではこうした「市場を形づくる」企業のことをシェイパー(Shaper)と呼んでいます。現在がどの状況かというと、私はレベル4だと思います。そして同論文でいう「シェイパー」は、我々の業界にもあります。
例えば本日(8月30日 火曜日)東京で開催された“機械加工業「社長の仕事」セミナー”の特別ゲスト講師 プラスエンジニアリング株式会社 もそうした「シェイパー」の1社だと私は思います。プラスエンジニアリングは「精密機械加工部品の産業インフラとなる」という経営理念のもとに、海外への生産移転が続く“量産マーケット”はあえて狙わず、“工機マーケット”さらに“設備マーケット”を主要ドメインとしてきました。工機マーケットとは、社内で使用する設備を設計・製作している部門のことです。工機部門が強い会社として知られるのがデンソーやヒロセ電機です。ヒロセ電機などは商品開発サイクルが速いことで知られていますが、ひとえに強い工機部門のなせるわざです。工機部門に似た部門として生産技術部門がありますが、一般的には生産技術部門には設計者はいません。工機部門には設計者がいます。そうした違いがあります。また、設備マーケットとは半導体製造装置や検査装置、印刷機械、食品機械、さらには工作機械や射出成型機など、文字通り“設備”を生産しているマーケットのことです。このマーケットは日本メーカーが独自技術で競争力を持ち、また受注生産の多品種小量生産であるため、国内での生産が主体となっている分野です。さらに「工機マーケット」と「設備マーケット」を比較すると、① 工機マーケットは市場規模が小さいが価格競争にはなりにくい ② 設備マーケットは市場規模が大きいが価格競争になりやすい と、こうした側面があります。なぜなら「設備マーケット」では、加工部品を外から仕入れてきて中で組立て、また外に売ります。いかに安く仕入れるかで自社の利益が決まりますので、当然のことながら購買姿勢は厳しくなります。しかし「工機マーケット」は、加工部品を外から仕入れてきて中で組立て、さらに中で使います。安く仕入れる、ということがそれほど高いインセンティブとして働きません。言い換えると「設備マーケット」はPL(損益計算書)的な側面を持つのに対し、「工機マーケット」はBS(貸借対照表)的な側面を持つことがわかります。そこでプラスエンジニアリングでは「工機マーケット」を主要ターゲットとすることにしました。特にリーマン・ショック後にこの動きを加速させました。その結果、リーマン・ショック前のピーク時と比較して、現在では売上はほぼ同等に戻し、かつ付加価値率を60%から70%と、なんと10ポイントも向上させたのです。この様に、現在という時代は「受身」ではなく、自ら積極的に「市場を形づくる」ことが求められます。ぜひ皆様におかれましても、「シェイパー」になっていただきたいと思います。



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