船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の市況~先端「町工場」視察セミナー in 東京の見どころ~

片山 和也
更新日:2016.10.05

 来る11月11日(金)、毎年恒例の先端「町工場」視察セミナー in 関東を開催いたします。毎回、「国内で生き残る」モデル工場を視察する大好評の視察ですが、今回は東京都八王子市のモデル企業3社を視察します。その3社について見どころを簡単にご説明したいと思います。
1社目:試作・R&D支援に特化することで年商5倍の超優良企業:株式会社内野製作所
同社は完成車メーカーの精密歯車の試作・開発支援に特化することにより業績を伸ばしています。何とここ15年間で年商4.5億円(社員25名)から、年商26億円(社員68名)と急成長を遂げています。同社が躍進した秘密は一般的な製造業と逆をいっていることです。一般的な製造業では「量産」の仕事を取るためにやむを得ず「試作」を行います。「試作」は一品一様な上に難易度が高く、本当にモノになるかどうか、実際につくってみなければわかりません。確実に売上が見込める「量産」を手がける会社からすると「試作」の仕事はできれば手をつけたくない、というのが本音のところなのです。しかし内野製作所は違います。同社が手がける分野は「試作」のみであり、場合によっては完成車メーカーの研究開発(R&D)までサポートします。大手完成車メーカーを相手にR&Dの分野で対等に付き合うためには、同社も研究開発を欠かすことができません。内野社長は頻繁に欧州に出張に行き、常に最新の設備情報や技術情報をキャッチしています。同社には日本でも希少な欧州製の最新設備が数多く稼動しています。こうした取組みから同社は、平成25年に東京商工会議所主催「勇気ある経営大賞」の「大賞」を受賞するなど、現在注目を集める町工場の1つです。※ 誠に申し訳ございませんが同社につきましては同業の方のご視察はご遠慮いただいております。
2社目:オールド技術「鋳物」を究めて八王子から世界に挑戦!:株式会社栄鋳造所
同社は社員数30名、またそのうち25%の社員が20代という業界でも異例の若い鋳物工場であり、鋳物のIT化(3D-CAD/CAM,マシニングセンター導入)を進めています。そして同社の得意技術は鋳物技術の中でも「Vプロ」(バキューム(=真空)のV)と言われる技術です。通常の鋳物では、鋳物砂の中に木型を入れて職人が鋳物砂を手作業で固めます。その後、木型を取り出して融けた金属を砂型に注ぎ込むことで製品をつくります。それに対してVプロでは、さらさらの状態の砂を真空引き(減圧)することで固めます。職人の手作業の場合と比べて品質面・コスト面で高い競争力を有する技術です。また同技術を応用することで「精密パイプ鋳込み」を行うことが可能であり、この技術は半導体製造装置の冷却プレートなど、最先端のIT産業を支える技術として注目を集めています。さらに「切削から鋳物への置き換え」も可能であり、同社のVプロにより切削から鋳物に置き換えられた製品は、最大で1/3ものコストダウンを実現します。また同社は難民の雇用も含めたダイバーシティ経営に力を入れており、経済産業省による「ダイバーシティ経営企業100選」にも選定されています。さらに今年はアメリカに現地法人の設立も予定しています。
3社目:市場消滅の危機から見事復活!日本一あきらめない町工場:株式会社アトム精密
同社の創業事業はカーオーディオの受託生産であり、CDの普及とともに売上も右肩上がりで伸びていきました。ところが90年代に入ると仕事がどんどん海外移転され売上も激減。ピークで200億円あった売上が何と3億円近くにまで減少しました。まさに市場消滅の大ピンチでした。当時流行していた携帯電話の受託生産にも手を出しましたが低採算であり、同社は存亡の危機に立たされました。そうしたどん底の時期に二代目社長となったのが、現在の一瀬社長です。一瀬社長はカーオーディオ同様に将来の先細りが予想される携帯電話事業からの撤退を決断。その代わり今までの量産技術で培われた省力化設備事業への本格参入を決断しました。わかりやすく言えば、今まで「家電」をつくっていた会社が、「家電をつくるための設備」をつくる会社に業態転換したわけです。例えば最近では大手家電メーカーから、掃除機を組み立てる装置を受注しました。アトム精密が提案したこの装置のおかげで、この大手家電メーカーは中国での人海戦術での生産から、日本国内での省力化設備による生産に切り替えることができました。まさに“製造業サポート企業”に業態転換したと言えます。現在は家電分野はもちろん、液晶や電子部品などの最先端分野、食品分野も手がけています。同社のモットーは「NOと言わないものづくり」です。例えば顧客からの要望があれば、同社は従業員40名であるにもかかわらず、さらに60人ものエンジニアを臨時にかき集めて短期間に大量の仕事をこなすこともいといません。こうした同社の姿勢は高く評価され、現在の売上は約10億円でピークの1/20ですが、営業利益率は10%超と高く、利益水準では量産を手がけていた時と遜色の無い水準に近づいています。



最新のコンテンツ