船井総研「部品加工業」経営FAXレター

今月の市況
~ AIゴールドラッシュ ~

片山 和也
更新日:2017.05.24

今年2月に出版された「財政破産からAI産業革命へ(PHP研究所:吉田繁治 著)」を読みました。同書によると現在の日本経済最大のリスクは1300兆円にも及ぶ日本の政府部門負債であるといいます。これはGDPの約2.5倍であり、先進国を含むあらゆる国と比較しても突出した異常な数値です。

ところがかつて、現在の日本同様にGDPの2.5倍もの負債を抱えていた国がありました。それは第二次世界大戦後の英国です。英国はこの膨大な負債を国家破産せずに減らすため「金融抑圧政策」といわれる政策をとりました。これは金利を0.5%以下の低金利に押さえる一方、インフレ目標を3~4%と政策金利よりはるかに高い数値に設定する、というものです。インフレになれば国の借金は事実上減っていきます。逆にGDPの2.5倍もの負債(国債)があると、金利2%で財政危機に、金利3%で国家破産するといわれています。なぜ国家破産するのかというと、国債の金利の支払いが国債の発行だけで賄えなくなり、政府部門からの支払いができなくなるからです。ちなみに英国の場合、この「金融抑圧政策」が功を奏し、現在の英国の国債残はGDPの0.8倍と、米国・フランス並みの水準まで下がっています。ところが「金融抑圧政策」は国民生活の貧困という副作用を生み出します。英国の場合は「英国病」と呼ばれた経済の衰退を招きました。実際、戦前までは米国経済なみに大きかった英国経済は、現在では戦前の1/8までに落ち込んでいます。

そして同書によると、日本は、早ければ2018年から19年に、遅くとも2020年から21年に70%の確率で財政破産する、といいます。ただし30%の確率で財政破産しない。その場合、日銀は国債を買い続けながら金利を無理に低く維持する「金融抑圧」を数十年にわたって続けることになる と、いいます。先日の日経新聞を読むと、アメリカの国務長官が「日本の為替安には我慢ができない」と発言した、と報じられていました。今、日本の円が円安になっている要因は、日銀のゼロ金利政策にあります。仮にこのゼロ金利政策が国際的に批判され、何らかの理由で政策金利を引き上げざるを得なくなると、前述の様に日本は国家破産に向けて突き進むことになります。

もちろん、未来のことは誰も予測できません。しかしハッキリしていることは、これから間違いなく不況が来る、ということです。前述の話もその一つの要素に過ぎません。最大の不況対策とは自社の「高収益化」です。これは私ども船井総研が一貫してお伝えしてきているテーマです。しかしチャンスもあります。それは「AI」産業革命です。同書によると18世紀の産業革命の際の「蒸気機関」と同様に「AI」が21世紀の産業革命の中心的役割を担う、といいます。IBMやグーグルの様に「AI」そのものを手掛ける、というのも時代の波に乗る方法です。しかし同書でも述べていますが、「AI」そのものはデファクトスタンダード化、あるいはコモディティ化する可能性が高く、インターネットの検索エンジンと同じく、業界1強の過酷な競争になる可能性が高いと思われます。ここで私が思い出したのが18世紀のアメリカのゴールドラッシュです。ゴールドラッシュで一番儲けたのは金の採掘者ではありません。金の採掘者に対してジーンズを供給したリーバイスや、金の採掘者に対して缶詰を供給したキャンベルスープなどなのです。「AI」産業革命も同じです。これから「AI」産業革命で必要とされる周辺産業として、センサー・MEMS・電子部品・カメラモジュール・半導体製造装置・バッテリー・ストレージ機器・ヘッドアップディスプレイ・有機EL・液晶・真空技術・ロボット・精密減速機・モーター・FA機器・マテハン機・各種産業財 その他 を挙げることができます。「AI」を直接手掛けるよりも、こうした「AI」を実現するために必要な周辺産業に対して部品を売り込む方が、「AI」産業革命の波にのる最も現実的な方法ではないでしょうか。これを私は“AIゴールドラッシュ”と呼んでいます。

部品加工業が“AIゴールドラッシュ”に乗る上で最も大切なことは、見えない産業のニーズを獲得するためのマーケティングです。今の時代、最も大切なことは不況を乗り切るための「高収益化」と、この“AIゴールドラッシュ”の波に乗るための「マーケティング」ではないでしょうか。



最新のコンテンツ