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工場副資材のラストワンマイル

先日、船井総研の片山さんとの雑談の中で「なぜ機械工具商社は倒産しにくいのか」ということについて話をしました。
実際に会社組織として成り立っている機械工具商の倒産件数割合は他の業種と比較すると低めです。

機械工具商は地元密着型でビジネスモデルも一見分かりやすく見えるからか、公的機関や大学等の研究論文等もいくつか存在します。
サッと目を通したところ、その多くが「EDIや各種通販の拡大や産業の空洞化により、極めてきびしいビジネス環境にある」という論調であるようです。

もちろん利益の圧迫や、売上の減少は各社あるものと思いますが、根本的にビジネス形態の変革を喫緊で求められている機械工具商は、実際には少ないようです。

 

なぜ倒産が少ないのか。

客数が多い、接点のある顧客担当者の数が多い、商品それ自体というよりコンビニエンスを提供している、昔から貸し借りのある付き合いだ、さまざまなポイントを挙げることができますが、根本的には「工場副資材の流通構造のラストワンマイルを押さえているから」だと思います。

言い換えれば、顧客に最も近いところで仕事をしている、このこと自体がビジネス上での大きな差別化点となっているようです。
概念的には新しいことは無く、昔から「御用聞きの強さ」等で表現されていましたが、物流の観点から捉えると上記のような表現になると思います。

「ラストワンマイル」とは昨年の物流クライシスからのバズワードで、従来は通信業界で用いられていた言葉ですが、現在では物流用語としての方が主で捉えられています。

通信販売を例にとると、顧客がWEBサイトで注文を行うと、倉庫から梱包出荷されるわけですが、その後荷物は各物流拠点を移動しながら地域の宅配便の拠点へ輸送されてきます。

ラストワンマイルが指すのは、長い物流経路の中で顧客へ手渡される最後の物流区間、顧客接点です。まさしく物流においては顧客までの「最後の1マイル」のことです。

 

なぜラストワンマイルが重要なのか?

先日アマゾンの利益額が急拡大ということで話題となりましたが、アマゾンはこのラストワンマイルを徹底して重要視しています。

アマゾンという会社は企業コンセプトに Earth’s most customer centric company(地球上で最も顧客中心の企業)と掲げています。
端的に、他社とどういう違いがあるか分かるのは社内のKPI設定方法です。

一般的に通販会社は注文した顧客に対し「いつ荷物が発送できたか」をKPIに置きますが、アマゾンの場合は「いつ荷物が顧客に手渡されたか」をKPIに置いています。これは注文に対して迅速に発送すること、ではなく迅速に配達完了することを重視していると言い換えることができます。

必然、ラストワンマイルを担っているB2C宅配会社への負担も大きくなり、それが昨年の物流業界のトピックともなりました。

ヤマト運輸や佐川急便といったB2C宅配業を行う会社は、各エリアの膨大な顧客情報を握っています。

「こに家は共働きで夜しか居ない」「土日は居なくて平日が休み」「よく〇〇会社の通販を利用している」「子供が2人いる」「いつも音楽を流している」「2世帯住宅」等々、下手をすれば隣人よりもその家庭のデータを握っているのです。
アマゾンが欲しいのはまさしくこの部分のリアルな情報で、スマートスピーカー等も主目的はこの種の情報を得るために展開していると言われています。

人が何かを買う、というのは非常に大きな意思決定の機会ですから、その意思決定の集積となる実際の購買情報とラストワンマイルのリアルの情報が合わさることで、大きなビジネス機会が生まれ得ると言えます。

 

高頻度で顧客「現場」へ行っていること、それ自体が強み

話を機械工具商社に戻すと、機械工具商社は工場副資材に関するラストワンマイルの強力なプレーヤーであると言えます。機械工具商社は副資材の「配達」の役割を果たしている、と言われたりすることもありますが、実際には物流会社と異なり購買情報を握っています。

「いま、だれが、何を欲しがっているのか」この情報は現場に行かないと得られない、価値ある情報です。
WEBサイトのリコメンド機能や、高機能のマーケティングオートメーションを駆使しても疑似的にしか得られないリアルの情報を直接つかんで受注・配送まで対応できること、これは大きな強みです。

「なぜ自分たちよりも加工やメカのことに詳しくない商社が、ユーザーから案件を引っ張ってこれるのか」

これはよく加工会社やセットメーカーの経営者との話で上がる話ですが、営業力という漠然とした点に目をつむり実際の行動のみに注目すれば、発注権限を持った人のところへ、高頻度で直接訪問している、多数の担当者と会っている、これ以外に受注できている理由は無いように思います。

 

商談のタネ仕込みは会社全体で、刈り取りは「御用聞き」で行う

「現場」へ訪問することそれ自体が強み、差別化であると述べましたが、
生産性を上げる、アップセル・クロスセルを行うためにはリアルの営業だけでは不十分です。
こと情報発信においてデジタル技術に勝るものはありません。

デジタル技術の重要な要素はいくつかありますが、ほぼ無料で量産が可能なこと(コピー性)と即時に情報のやり取りが可能なこと(即時性)においてアナログ媒体よりも圧倒的に優れています。

情報発信、例えば新技術や新商材、あるいは案件につながるお役立ち情報は会社全体で組織的に行い、刈り取りはリアルの「現場」で行う。こういったハイブリッドの取り組みが今後は必須になるでしょう。

機械工具商社に話を絞れば、徹底してリアルの「現場」に強いことが強みであるならば、その強みを際立たせる補強を、デジタル技術を用いて行うべきです。注力すべきはデジタルによる「営業補助」と言えます。

逆に加工会社やセットメーカーの場合は、一般論として、本来行くべき客先や会うべき担当者の「現場」へ訪問していないケースの方が多くなります。この場合はデジタルによる営業補助はもちろんですが、「営業行動管理」の方が成果につながりやすいと言えると思います。


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