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中小製造業のブランディングと組織

以前のメールマガジンで自社ブランディング、ひいては「ごひいき」を作ることが重要と書きました。
「具体的に何からはじめたらよいか」というご質問を多数頂きましたので、引き続き中小製造業、特に受託型の企業が取り組むべきことについて書かせて頂きます。

価値の種類
 
この商品は「価値がある」というとき、価値には3種類あるといわれます。
 
機能的価値
情緒的価値
自己表現価値
 
の3つです。
 
機能的価値は商品そのものが持つ機能、スペックによってもたらされるもので、「1回自社に発注してもらえば、ものの良さが分かるはず」というコメントによって代表される価値です。
 
情緒的価値とは商品やサービスを用いることによって得られるポジティブな感情をもたらすもので、たとえばiPhoneの優れたデザイン性や、レザーの名刺入れの上質な質感、といったものを指します。電話や名刺入れの果たすべき機能上ではなんら優越性をもたらすものではありませんが、人によってポジティブな感情を呼び起こします。この受け手にとって価値が変わるという点は大きなポイントです。
 
最後の自己表現価値とは、その商品・サービスを所有することで得られる自己実現、ステータス感を表します。「近所の家は国産車だけど、ウチはメルセデス」といった優越感(揶揄する意図はありませんが)や、「エルメスを持てる私は、裕福で洗練された人間」といった自己表現感を指します。
 
BMWの標榜する「最高のドライビングマシーン」「駆け抜ける喜び」は自己表現価値の例として最たるもので、情緒的価値よりも対象となる顧客はさらに限られることが多いでしょうが、強烈な「ごひいき」を作ることに役立ちます。
 
自社はどのような価値を提供するのか
 
「その価値の違いはは分かったが、一般消費者向けの話で我々にはちょっと適用しにくい」、この意見はもっともなのですが、少し今の顧客のことを考えてみてください。
 
「実際にはまだ使わないが、万一のため社内に置いておきたいので、納期は早めでほしい」といった納期優先の顧客もいれば、「競合が価格を下げてきたので、我々もコストダウンしなければならない」と価格優先の顧客もいる。また、「図面には書いていないことだが、このレベルの打跡の部品を我々の製品に使うことはできない」といった品質を重視する顧客もいるでしょう。
 
図面や発注書といったQCDのスペックに現れない、それぞれの取引先企業の個性(ポリシーといってもいいですが)は、「ごひいき」を作る上での重要な示唆に溢れていると私は思うのです。
そも、純粋にQCDのみで自社を評価している顧客が実際どれほどいるでしょうか。
 
「あの会社なら何とかしてくれる」「A社はB社よりちょっと高めだけど、品質は絶対に安全できる」「今回は一番の得意先への納入機なので、こちらも一番のサプライヤーで作ろう」
こういった視点は、実際の商品のQCDとは厳密には無関係です。
 
自社が提供する価値とは何か、顧客にどう自社を捉えてほしいのか、10年続く良い関係性づくりのためには何が必要か、こういったポイントは、10~20程度のキーワードで表現できるはずです。まずはこういった自社のポイントを箇条書きとして抽出することをお勧めします。
 
顧客との接点を注視する
 
顧客と直接接触する機会のことをタッチポイントといいます。一般の商品であればテレビCMやWEBサイト、商品棚等が該当し、我々製造企業の場合であれば電話窓口、営業、納品、メール、請求書等がそれにあたります。
このタッチポイントは、商品そのものとは直接関係なく顧客の脳内にイメージを作ってしまう重要なポイントになります。
 
たとえば経営理念として「至誠」を掲げているのに、顧客からの電話問い合わせは色んな担当者をたらい回し、とか「折り返し連絡します」と伝えているのに折り返しがない、とか。これは明らかに内外に発信している「至誠」と大きく乖離した状況です。誰がこのような会社に愛着を感じるでしょうか。
 
営業研修等では「お客を不安にさせないことがまず営業担当には大事だ」と言われますが企業組織においても同様です。自社が掲げているビジョンやミッション、企業理念に対して反する行動は信頼を大きく落とします。
 
「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」とはGoogle社が掲げるミッションですが、特定企業や政府の意向が検索結果に入り込むようになると、自然とリテラシーの高いユーザーは他の検索媒体やアプリに移動していくでしょう。故にGoogleは中国から撤退しました。
 
 
船井総研でもこの顧客とのタッチポイントという点は、近年特に重視している点です。私が新卒で船井総研に入社したころは、新入社員が会社に掛かってくる電話を取る、という仕組みでした。対象の電話は全社の代表電話を除き、セミナーや研究会のお客様、社外に出ている先輩コンサルタント等さまざまです。電話対応をはじめに行うことで、言葉遣いや顧客対応、社内の各部署との連携を学ばせようという意図でした。
 
しかし今は新入社員が電話を取ることはありません。
それにはさまざまな理由があるのですが、最も大きな理由は経営者の方を相手にしているコンサルティング会社の電話窓口は、対応を一流にすべきであるという思想です。
 
船井総研と長年お付き合い頂いている方は、「個人の優れたコンサルタントの集まり」から「業種別研究会をはじめとした、コンサルティングチーム・組織」へ変化していることを感じて頂けていると思います。近年の船井総研の志向は「中小企業 経営者向けに日本一のコンサルティングサービスを一貫で提供する」という方向で進んでいます。
 
ならば果たして、顧客と接する電話口や連絡担当に品質のばらつきがあってよいのか。どのような場合でも顧客が不安になるような対応が発生してはならない、ということで現在は研究会ごとの専任担当、セミナーであればセミナー専門窓口が、定期的なトレーニングを行いながら顧客とのタッチポイントの役割を果たしています。
 
翻って、自社の場合はどういったタッチポイントがあり、どのような磨きこみができるのか、という点を考えて頂ければと思います。
 
例えばある機械加工の会社では、自社の加工品を納品するときに、自社の(今風の)ロゴマークを印刷したダンボールで納品しています。商品そのものは何も変わりませんし、他社でも同じように作ることができる部品ですが、顧客の納品場所に届いた際に一目で分かります。ましてや隣に並んでいる箱が、ミスミとかモノタロウとか、果てはスーパーのダンボールの再利用であるような場合では。
 
「ウチには技術がある」と言う会社、そして実際に技術がある場合でも、見た目から他社と一緒にしてしまうのはもったいないことだと思います。そして残念ながら初見の人にはその誇りも、他社の使いまわしのダンボール、梱包資材では伝わらないでしょう。
 
何もすべての問い合わせに過剰に丁寧に対応する必要はありませんし、梱包に金を掛けろ、ということが言いたいわけでもありません。自社が在りたい形、提供する価値を伝える、維持するために必要なことだけ実行すればいいのです。
 
 
組織の無形の財産
 
私の好きな言葉で「学校で学んだことをすべて忘れてしまった時になお残っているもの、それこそ教育だ。」というものがあります。なお発言者はアインシュタインのようです。
 
同じように、企業が持つ設備をはじめとした人以外の有形の資産をすべて取っ払っても残るのが、企業文化であり、企業ならびに商品を支えている無形の財産です。
トヨタの世界中の工場が明日すべて爆発して壊滅したとしても、トヨタのものづくりは生き残るでしょう。でも設備はそのままでも、従業員がすべて一度に入れ替わってしまっては同じものづくりはできません。
 
このような、関わる人同士そして組織それ自体で構成される資産をソーシャル・キャピタルと言います。人が1~2人入れ替わっても問題なく運営されるような、企業の無形の資産です。これを磨き上げることが重要で、そのためには「従業員の働きやすさ」「職場の関係性」といった点も重要ですが、企業の理念、行動指針といったものがより重要です。
 
ブランディングにおいての経営者の仕事は、その理念・指針の策定、環境整備、円滑にタッチポイントが運営されているかの確認が主となります。「あの会社は『社長だけ』だからな」「社長の名前しかよく憶えていないな」と言われている状況は、ブランディングとは言わば対極にあり、組織として認識、信頼されることが非常に重要です。
 
もしいま、社長が営業や折衝において前面に出ているようであれば、それは改めて一歩後ろに下がって組織のさまざまな点を注視することが大事であると思います。

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