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「今後無くなる仕事」論の実際と中小製造業のRPAについて

「2025年には人間の仕事の40%近くが機械に代替される」
 
これは2013年にイギリスの論文で主張されたもので、以後様々な媒体で引用され、影響を与えました。
代替される内容としては、主にAIとロボットの進歩により
人間が行っている
「判断」と「作業」が自動化されるというものです
 
さて、正確にはこの論文は「40%近くの仕事が代替され得る」というもので、可能性を論じたものです。
これを「仕事がなくなるぞ」とする
引用には、引用に当たっての誤解や悪意、扇動の気配を感じますが、
重要なのは、発表から5年が経ったが本当に代替されたのか、今後され得るのかという点でしょう。
 
野村総研も冒頭の論文に続く形で日本の雇用の49%は無くなる可能性がある、とレポートを発表しています。
ここでは無くなる仕事として、「電車の運転士」「金属研磨工」「NC旋盤工」等が挙げられています。
 
「そんな単純じゃないよ」と思われた方に私は全く同意で、最初にレポートを出した意義はあるものの、
各業界で参考にできるレベルには達していないというのが感想です。
マッキンゼー等が発表しているレポートは各仕事の工程分解まで行っており、
もう少し代替可能性は低い数値となっていますが、それでもまだ中小規模の製造企業としては参考にしにくいレベルのものです。
 
むしろ就職情報サイト等に「今後消える仕事」として製造業の現場関連の仕事が一緒くたに並んでおり、
現場とかけ離れて不安を煽っている面があって、害悪の面も大きいと思います。
 
確かに調理ロボットが実用化されたり、協業ロボットを(宣伝も兼ねながらでしょうが)よく見かけるようになったりと代替は少しづつ進み、また不可逆の方向にもあると思いますが、実際に実務に関わる人間としてはブームに踊らされることは避けなければなりません。
 
実際に人の仕事は代替されているのか?
 
好景気の影響もあるとはいえ、7月末発表の雇用統計によれば、2018年6月の完全失業率は2.4%。
統計データ元の信憑性の課題(ハローワークベースの数値である)はあるものの、極めて低い水準にあると言えます。
 
現時点ではITやロボットにより仕事の総量が減っている、ということは無さそうです。
問題は失業率よりも産業別の労働人口構成なのですが、その点はいったん置き、
今回は人の代替可能性として、以前にも少し触れたRPAについて取り上げます。
 
 
RPAとはRobotic Process Automationの略称で、業務における自動化のことを指します。
FA(Factory Automation)やPA(Process Automation)は製造工場やプラント等の自動化を指しますが、
RPAの場合は主としてPC内の各種業務を自動化するもの、という理解が良いと思います。
 
日経新聞でも扱われることが増えており、例えば日本国内の雇用の7%はRPAで消え、22%の雇用の仕事内容が大きく変わると触れらていたりします。昨年はメガバンク等を中心に銀行系が導入するということで大きく話題になりました。
 
RPAは紋切り型の説明ならば、PC上で行う定型業務が自動化できると言えます。
各営業日報の業務システムへの転記や受注情報メールから販売管理や生産管理システムへの入力等、日常発生する定型的なPC業務を、人がやらずにロボットプログラムに行わせることが可能です。
 
しかし、結論から先に申し上げると、多くの中小製造企業にとってはRPAは喫緊の重要課題にはならないと思われます(補助金等は申請しやすいと思いますが・・・)。
 
理由は2つあり、単純な定型業務が実はそれほど多くないこと、デジタル・IT化の投資効果の方が大きいケースが多いことが理由です。
 
 
中小製造企業のRPAでの業務代替の可能性
 
差しあたって、ご関係先にもRPAの可能性についてヒアリングを行ってみましたが、
「生産管理システム周りで使えそうな気はするが、実際には個別判断が必要なので難易度が高そう」
「事務員といえども事務ばかりしているわけではなく、自動化できそうな本当の定型業務は1日のうち2時間くらい」
「紙ベースでアナログにやっているから、そもそもパソコン使わないし・・・」
といったコメントが大半でした。
 
可能性があるのは、1日のうち2~3時間、本当の定型業務を行っているケースですが、この場合も費用感が次の課題になります。
自動化できるかどうか、という可能性の問題とコストに見合うかという合理性の問題は明確に分けなければいけません。そもそも常に自動化が安く、早く、正確ならば、自動車メーカーがあれほど大量に期間工を雇っている(しかも人手不足)説明ができません。
 
仮に、事務員2人の1日2時間の業務が自動化できるなら、
2人×2時間×20営業日=80時間
 
事務員(正社員)を仮に、敢えて「コスト3000円/時間」と表現すれば、
3000円×80時間=24万円 となります。
 
RPAのサービスにも色々ありますが、大手企業向けのサービスの場合はこの時点でコストが合わなくなります。
大手向けのサービスの場合は何十人も並べて同じ事務作業を行っているケースを想定しているからです。
 
では小規模向けRPAサービスの場合合うのか、と言うと「業務内容によるが、かなり用途が限定される」という答えになります。
小規模向けのRPAサービスは、計算したところだいたい時給1000~2000円くらいのサービス料で使え、パートさんを雇うのと比較できるくらいの金額で利用できますが、サービス内容が限定的であったり、設定は自分たちで行う部分が大きかったりするため、プロにアウトソースした方が結局安いし正確、というシーンも少なくないようです。
 
 
RPAが本当に有効なのか?
 
RPAではPCを設置して、原則無人で動かします。ずっとPCの電源が付いており、ロボットが各種ソフトウェアを起動し、無人で動き続けるのです。
 
そのような光景をイメージした際に、違和感を抱く方もいらっしゃるのではないかと思います。「もっとスマートなやり方がありそうだが・・・」と。
 
これは私も同意見で、中小企業の場合、多くのケースでRPAは最後の最後の検討課題にすべきだと思います。まずはデジタル・IT投資を優先すべきです。RPAではPCのコピーペースト、クリックの回数は減らない、という点に留意すべきです。まず人間のPCクリック回数や実作業時間自体を減らすために投資すべきです。
 
それらの改善を社内でおおよそやりつくしたなら、外部へのアウトソース(BPO)を考え、最後に代替・省略できない、あるいはコストがどうしても下げられない工程に対してRPAを適用するべきです。
 
※それでも今すぐ取り組みたいという場合は、無料で使えるRPAツールや、各種マクロ作成等を付近のシステム会社に習熟させ、適宜カスタマイズして事務作業の効率化を図る(低予算で)、というのが最も安上がりかつ楽に使えると思います。
 
 
今後の中小製造企業にとってのRPAの可能性
 
では中小企業においてRPAの採用の余地はないのか、というと「多くの会社では3年程度は採用検討しなくても大丈夫だろうが、その先は要注目」というのが現時点での私の見解です。なぜ3年程度なのかというと、おそらくその頃には中小企業向けのパッケージが十分なアプリケーションで揃うだろう、という点とモバイルとの連携がここ数年で大きく進むだろうからです。
 
昨年Apple社はWorkflowというアプリの開発元を買収しました。買収額は公開されていませんが、事業規模からすると破格の金額であったと言われています。WorkflowはiOS上で動く自動化アプリで、アプリ間の作業自動化を行います。例えば、「GPSで指定するある地点に到達したらから自動でメールやSMSを送る」「〇〇から△△というキーワードを含んだメールが来たら、Todoリストに自動追加する」といった自動化の設定を簡単に行うことができます。Microsoftも同様のサービス、Microsoft Flowというアプリを開発していたりします。
 
こういった自動化の基盤がモバイルでも整ってくると、今まで多くの時間が掛かっていた工程が自動化や省略できる余地が非常に大きくなってくると思います。

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